外保連とは

外保連とは

会長挨拶

外保連会長 瀬戸 泰之  外科系学会社会保険委員会連合(外保連)は、わが国の外科系診療における適正な診療報酬はどのようにあるべきかを学術的に検討することを主な目的として、1967年に外科系の9つの主要学会が集まって作られた団体です。当初、本連合の設立に参加したのは、日本外科学会、日本整形外科学会、日本産科婦人科学会、日本眼科学会、日本耳鼻咽喉科学会、日本泌尿器科学会、日本麻酔科学会、日本形成外科学会、日本口腔科学会の9学会でしたが、現在では 120 の外科系学会が本連合に加盟しています。 わが国は1961年に世界にも類を見ない、医療における国民皆保険制度を実現しましたが、この医療保険制度の基本となっている社会保険診療報酬点数が、どのような根拠と基準によって決定されているのかは、これまで全く明らかにされていません。現行の外科系診療行為に対する診療報酬点数を見ると、個々の診療技術に対する評価が適正になされているとは言えず、また人件費、使用される機器、材料費などの必要経費がきちんと算定されていないため、採算がとれないものが多数存在しています。また、診療科の間で診療報酬に大きな格差が生じています。
外保連は、わが国の医療保険制度の中の外科系診療に対する、適正かつ合理的な診療報酬はどうあるべきかについて学術的に研究し、合理的な外科系診療報酬体系を構築することを目的として、設立以来検討を重ねてきました。その結果を1982年、設立後15年目にして初めて「手術報酬に関する外保連試案(第1版)」として公表しました。その後も引き続きいろいろな角度から更に詳細な検討を続け、1994年からは手術報酬についてのみならず、外科系の処置に対する報酬、生体検査に対する報酬についての検討も開始し、1997年・1998年には、これらの検討の結果を「処置報酬に関する外保連試案(第1版)」、「生体検査に関する外保連試案(第1版)」としてまとめ、公表しました。また、2010年には、麻酔に対する報酬についての検討も始め、2011年には「麻酔報酬に関する外保連試案(第1版)」を発表しています。
その一方で、これら試案の内容は実際の臨床現場における診療行為の実態と一致していなければなりません。それゆえ、手術試案に関しては、機会あるごとに数百施設以上を対象に実態調査を行い、大きく乖離している手術については、手術時間や外科医師数の修正を行ってきました。また、手術の技術度については、極めて難易度が高く、一部の医師あるいは一部の施設でしか実施できないような、いわゆる技術度E群手術を、手術委員会で領域横断的に繰り返し議論を行い、標準化の程度や普及度の検討を行った後、D群手術への見直しを行いました。これらのプロフェッショナルオートノミーを発揮したたゆまぬ努力が認められ、2010年の診療報酬改定においては、当時の中央社会保険医療協議会遠藤久夫会長から、「科学的根拠を有する唯一の資料であり診療報酬改定の参考にする」との評価をいただき、外保連手術試案をもとに、難易度の高い術式を中心に、苦しい財政の中においても、大幅な増点をしていただきました。ただこれは同時に、外保連という組織が、今後も襟を正して、ときには減点も辞さずに適切な精緻化を行っていく、ということを要求されたことになります。
その後2013年には、生体検査に関する試案のうち放射線画像部門について、第2部(放射線画像検査試案〔第1版〕)として扱うこととし、「手術報酬に関する外保連試案(第8.2版)」、「処置報酬に関する外保連試案(第6版)」、「生体検査に関する外保連試案(第6版)」、「麻酔報酬に関する外保連試案(第1.2版)」を「外保連試案2014」として上梓しましたが、ご存じのとおり、2014年の改定では、外保連試案2014で実態調査のうえ減点した手術の多くが、実際の診療報酬上も減点される、という厳しい結果をいただきました。根拠に基づいた外保連試案を高く評価していただいた結果ではありましたが、患者さんのために必死の努力をし、術式を標準化させ、ストレスを感じながらも手術時間を短縮してきた結果が、診療報酬の減点という結果を生んだことにより、「医療技術の新しい評価軸検討ワーキンググループ」を立ち上げ、従来の技術度、手術時間、外科医師数から算定する人件費の考え方の原則を踏襲するとしたうえで、様々な視点から外科技術の在り方を再検討する、という作業を開始しています。
2015年には、検討を開始した「医療技術の新しい評価軸」を盛り込んだ「手術報酬に関する外保連試案(第8.3版)」、「処置報酬に関する外保連試案(第6.2版)」、「生体検査に関する外保連試案(第6.2版)」、「麻酔報酬に関する外保連試案(第1.3版)」を公表しております。
2017年には、内保連と合同の内視鏡委員会を設置し、検討した「内視鏡試案」を盛り込んだ「手術報酬に関する外保連試案(第9.1版)」、「処置報酬に関する外保連試案(第7.1版)」、「生体検査に関する外保連試案(第7.1版)」、「麻酔報酬に関する外保連試案(第1.4版)、「内視鏡試案(1.2版)」を公表しております。
2019年、2021年に続いて、2023年には、「手術報酬に関する外保連試案(第9.4版)」、「処置報酬に関する外保連試案(第7.4版)」、「生体検査に関する外保連試案(第7.4版)」、「麻酔報酬に関する外保連試案(第2.3版)」、「内視鏡試案(1.5版)」を公表しております。
外保連では、基幹コードSTEM7を作成し、2018年度改定からDPC請求の際に、そのSTEM7を付記することが義務化されました。その目的ですが、従来の診療報酬表Kコードが十分に体系化されておらず、様々な不都合が生じている問題点を解決することです。2024年度改定でのSTEM7にもとづいた一部Kコードの見直しを目指しましたが、次期改定時の課題となりました。
外保連そのものは圧力団体ではありませんが、外保連の考え方やその手法を、広く関係者や市民に公表していくことは極めて大切です。外保連ニュースの発行や記者懇談会の開催など、広報活動を精力的に行っていますが、一方で、同様の活動を行っている団体との連携も重要であり、内科系学会社会保険連合(内保連)、看護系学会等社会保険連合(看保連)と協働し、三保連としての発信ならびに様々なご意見をいただく機会を持つための「三保連シンポジウム」なども2006年より開催しています。
皆様の、引き続きの温かいご支援とご協力をお願い申し上げます。

(文責:外保連会長 瀬戸 泰之)

Wikipedia「外科系学会社会保険委員会連合」2007年9月4日07:42の松下広報委員長による投稿は、このWebページの作成者によるものです。