日本の医療費について

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わが国の医療は国際的にどのように評価されているのでしょうか?

A) わが国の医療の評価は世界一高い

新聞やテレビは医療事故が起こるたびに大きく取り上げ、医療評論家と称する人達や、一部の医師までが、わが国の医療のレベルや質が良くないことを嘆いて見せます。このような報道ばかり見せられている国民の皆さんは、わが国の医療の質があまり良くないと考えられておられるかもしれません。

確かに医療事故の中には大変にお粗末としか言いようのない初歩的なミスによるものもあって、これは医師の一人として恥ずかしい限りです。しかし専門的な立場から見るとミスとは言えないようなものまでが、マスコミや警察では医療過誤として扱われ、医師や医療現場が困惑しているのも事実です。

事故をなくすために教育を徹底し、安全性を向上させ、更に医療の質を高める努力をすることに異論はありません。しかし、現在のわが国の医療事故の多くは、医師や看護師個人の責任というよりも、医療制度や医療現場のシステムの欠陥に起因していることも知っていただきたいと思います。

マスコミは報道しませんが、わが国の医療は実は国際的には世界一であると高く評価されています。世界保健機構(World Health Organization ,WHO)が発表しているデータによると、日本の健康寿命は世界一、健康達成度の総合評価も世界一です。平均寿命は男性が78.4歳、女性が85.3歳で、これも世界一です。乳幼児死亡率は出生1000人当たり3.0人で、これはスウェーデンの2.8人に次いで2番目に低い値です。

何かというと良い方の引き合いに出される米国はというと、健康寿命は世界ランクでは29位で、健康達成度の総合評価は15位です。客観的にみると、先進国の間でのわが国への評価は大変に高いのです(表2)

日本の評価は高い

戦後、長い間わが国は、米国の医療に学び、米国の医療をお手本としてきました。しかし今では医療の多くの分野で、技術の面でも、設備の点でもわが国は米国に追いつき、追い越し始めていることは確かです。米国や英国、ドイツ、フランスなどの欧米の先進国に出張しているわが国の企業の駐在員や家族の人たちが、病気になると高い航空運賃を払ってわが国に一時帰国し、日本の病院で手術や治療を受け、また欧米やアジア各国から毎年多数の医師がわが国のがんセンターや、大学病院に研修のために訪れていることも、わが国の医療レベルの高さを示すものでしょう。

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B) 医療制度が守る国民の健康

国際的に高い評価を受けているわが国の国民の健康が守られてきたのは、国民皆保険制度を基盤としたわが国の医療制度の成果であることは確かです。かつて厚生省の幹部が「世界に冠たるわが国の医療制度」と誇らしげに語っていたのはもっともなことです。ですから、何としてもこの国民皆保険制度による医療は守らなければなりません。最近の医療制度改革を見ていると、医療費を減らすことが優先され、最も優先すべき国民の健康増進や、医療の安全性や、医療の質までもが脅かされかねない“改悪”としか見られない“医療制度改革”が少なくないのです。

ほんの少しの医療費支出を惜しんで、わが国がこれまで世界に誇ってきた医療を根底から覆すような“医療制度改悪”を進めるべきではありません。わが国にお金がない訳ではありません。問題は予算をどのように使うかです。世界でも突出して多いわが国の公共事業費のほんの一部を医療にまわすだけで今までの医療を維持できるのです(図9)

各国の公共事業費(1995年、土地代を除く)
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C) 国民は社会保障や医療、福祉の充実を望んでいる

国民は社会保障や医療、福祉の充実を一番望んでいるのです。国民が一番望んでいるところに予算を使うべきなのです。国民の一人一人が政治家に働きかけ、国民の声を政治に反映しなければなりません。