日本の医療費について

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医療費はどのように使われているのでしょうか?

すでに述べたように、わが国の医療の特徴として、

  1. 病床数が多い
  2. 在院回数が長い
  3. 薬剤価格が高い
  4. 薬剤の使用量が多い
  5. 材料価格が高い
  6. 検査が多い
  7. 受診回数が多い

などが挙げられています。これらはいずれもが医療費の増加につながる要因となる事は確かです。

31兆円余りの医療費のうち、約8兆円が薬剤費であり、約2兆円が材料費として使われています。これらを合わせて約10兆円が製薬会社や医療機器、材料のメーカーの収益となるので、実際に診療所や病院が使っているのはせいぜい年間20兆円程度ということになります。製薬会社や医療機器会社は、厚生労働省が決める世界一高い販売価格に守られて、大きな利潤をあげています。一方、病院や診療所は、低く設定された診療報酬、度重なる診療報酬引き下げで経営は大変苦しくなっています。特に病院の経営は危機的状況で、自治体病院の90%、国公立病院の80%、民間病院の25%が赤字であると言われます。国公立病院の統廃合が行われ、自治体病院の売却や、中・小の民間病院の倒産や閉鎖が話題になっています。

病院閉鎖まで行かないまでも、不採算診療科の廃止や病棟閉鎖で、産科、小児科、救急医療が危機的状況に陥り、地域医療が崩壊に瀕していることが、マスコミでも度々報道されるようになりました。

厚生労働省は、医療制度改革で、診療報酬を下げ、病床数を減らし、在院日数を減らし、受診回数を減らすことによって、医療費を削減しようとしていますが、これらはいずれも病院や診療所や、患者及び家族に負担と犠牲を強いることとなり、ひいては医療の質や安全性をも脅かしかねない危険があることを認識しておくべきでしょう。